2020年度大阪市公営・準公営企業会計の 決算認定に反対する長岡議員の討論

10月13日、2020年度大阪市公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を日本共産党大阪市会議員団を代表しておこないました。

以下、全文です

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私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2020年度大阪市公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を行います。

 反対の理由は、かねてより大阪市は、市民サービスのために守ってきた様々な事業で民営化に走り、地下鉄や病院を手放して、市民の財産が失われる結果を招いており、2020年度決算でさらに重ねている民営化の方向は、本来果たさなければならないはずの、行政としての役割、公営・準公営企業が直営で市民財産を守るという責任を、放棄している結果になっているからです。

 水道管路耐震化のPFI事業しかり、工業用水道のコンセッション方式についても同様です。

 特に水道事業では、耐震化を進めるとして募っていた、水道管路更新のPFI事業に、全企業グループが応募を辞退したことについて、重く受け止めるときです。辞退の理由についてはヒアリング・分析はこれからとのことですが、コロナ禍で世界中の市場がストップし材料が入ってこないという状況を経験した今、民間では16年間という長期間、事業実施の責任を担う補償ができないという点が、辞退につながったのではないでしょうか。

 また、事業量の増加によるスケールメリット、まとめ発注で効率化という点も、想定外の事態が起これば逆に足枷になると感じられたのではないでしょうか。16年後の市民生活に責任を負うべきは、行政だけだということがはっきりしたということです。

 市長がインタビューで、「水道料金に跳ね返るため、厳しく見積もりすぎた」と分析し、「利用者が許容できる範囲で金額などの公募要件を見直したい」と話したことはとんでもないことです。

 要件を緩和しての再公募ではなく、水道局の職員体制を増やすことで、直営での管路更新を維持するべきです。そもそも現状の水道管路更新事業は、全て市内の中小企業に発注されています。コロナ禍で仕事が減るなど苦境に立たされている業者が多い中、大阪市が中小企業を支える事業から手をひいてはいけないのではないでしょうか。

 PFIで大企業に利権を渡すのではなく、現状の地元中小企業応援こそ強めていくこと、管路耐震化のスピードアップには、水道局の体制強化で対応していく方向性が必要だということを、指摘しておきます。

 PFI事業そのものについても、問題が指摘されています。今年5月に会計検査院は、「国が実施するPFI事業について」の調査報告で、2018年度までに実施された法務省など国の11機関が契約したPFI事業で、契約に沿った適正なサービスが提供されていない「債務不履行」が57事業のうち26事業で、2367件あったことや、少なくとも6事業でPFIの方が逆にコスト高になっていたことを、報告にまとめています。

 PFI事業は必ずしも、コストが安くなったり、スピーディにコトが進むわけではないということはもう明白であり、断念すべきです。

 次に、港営企業会計についてです。

 過去5年間ではほぼ約50億円で推移してきていた土地売却が、2020年度には20億円を下回っています。2021年度は100億円を見込むそうですが、予定されている売却地の大きなものは、咲洲の第6貯木場を埋め立てたものであり、メインの外貿埠頭から遠く、幹線道路からも外れているため、コンテナ集積場や荷捌き地として使用するには不向きな場所だという指摘もあるところです。

 またそれ以降は、これから売却する土地の確保に努めるということで、ここを売りますというのは示せない、不確定な状況だとお聞きしています。売れる土地が少なくなっており、売却については今後、低迷が予想されるというのが現状です。収入の重要な項目である、土地売却の見通しが困難であるということをふまえると、企業債償還、つまり借金返済の見通しについて、シビアに考える必要が出てきます。

 企業債の償還については、計画をもって、ここ数年着実に減らしてきていたのが、今回の決算で、増額に転じています。2021年度末には借金がさらに増えて、1300億円越えに膨らむ見通しです。今後、毎年だいたい100億円前後を償還していく計画ですが、それ以上の企業債を発行して、借金を増やすことは、大問題です。

 2020年度の決算は、港湾事業会計事業レポートによると「収益性は良好」とはしながらも職員一人当たりの営業収益が類似団体より低くなっており、生産性・効率性が悪い。累積欠損金1495億円についても多額であることから経営の改善を進めていく必要がある。また、企業債残高1120億円も多額であることから、企業債を着実に償還できるよう、営業収益の確保が必要であると総括されています。

 このように、厳しい決算評価でありながら、万博やカジノ・IRにむけて突き進むあまり、工事費などの上振れに次ぐ上振れを、これまで以上に積み重ねていくことは問題です。

 万博会場へのアクセス鉄道のインフラ整備費も、250億円の予定から40億円増加しています。一部国が出してくれるものの40億円中30億円は大阪市と埋立事業の負担になります。地盤の脆弱性についてはかねてより指摘されていた点で、「思ったより地盤が柔らかかった」は理由になりません。「また事業費増か」と市民のみなさんからもお怒りの声が上がっています。

 さらに、夢洲駅周辺開発の公募には1社も手が挙がらなかった。つまり、集客についても経済効果についても、民間からクエスチョンが付いたということです。「民間もうまみを感じなかった」夢洲駅整備に公費を投入してまで、夢洲で万博を開催するのは、もう立ち止まるべきです。

 また、カジノ・IR事業者がこのほど選定されましたが、その施設を建設する地盤についても、土壌汚染や液状化の問題点も指摘されている中で、いったいいくらつぎ込んでいくのかという事に怒りを覚えます。

 カジノ・IR頼みの長期収支見込が立たない現状を考えても、今後も企業債残高を増やしていくことは許されません。

 カジノは世界的に見ても斜陽産業であり、カジノ業者は経営不振が相次いでいます。大阪でカジノ・IRに、1社独占で選定された事業者も例外ではありません。株価指数などの格付けの代表格であるS&Pが、今年3月にMGMリゾーツをBプラスに格下げし、「見通しはネガティブ」としていることで、明らかなわけです。

 カジノ・IR誘致のために、ギャンブル的に事業投資をし続けることはやめて、引き際を見極めることが重要です。とばく場の誘致など、そもそも行政が推進することではありません。

 大阪市の本来の役割は、市民生活のためのインフラや制度を整えることです。コロナにかかっても医療機関も保健所体制もたりずに自宅に放置。道路の白線はカスカスで、センターライン消滅の危険道路とまで言われる状態の大阪で、カジノ誘致を進めるのではなく、市民の命と安全を守るために尽力すべきです。『リスクマネジメントを意識し経営の健全化に努める』ことが大事だと、港湾局の総括にもありました。

 夢洲は、コロナ禍で自宅でのお買い物が増えている中ですので、本来の物流の拠点としての役割こそ、果たしていく時です。

 また、夢洲を負の遺産という方がいますが、そんなことは決してありません。浚渫土砂の受け入れや、廃棄物の最終処分場としての大きな役割があります。トイレのない家では快適な生活などおくれるべくもないように、最終処分場を大切にしなければ、市民生活は破綻します。

 本来の行政としての役割を見つめなおし冷静になって、ギャンブルはきっぱりやめ、民生活を第一に考えた港営事業・埋立事業に切り替えていくことこそ必要だという事を強調し、決算への反対討論とします。

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